果たして何処からがこの人形劇のハジマリかはわからない。
幕を上げたのは姫君か、それとも人形師か。
それすらも今となってはあやふやで。

ただ、

今日も機械は、愛する姫君のために煙を空へと立ち上らせる。



その日出会ったのは姫君の意図か運命の悪戯か。
エリシアとアルスは森で出会った。

野犬に襲われるも、漂う霧と謡唄いに助けられる。

帰るようにと諭されて、駆けるために取った手。
あぁ、その手が幕上げの糸へと繋がるとも知らずに。


やがて歯車は大きな音を立てて動き出し、最後の幕は上がる――――


惹かれ合うヒトと機械。
淡い恋心を抱くエリシアと芽生えたソレに戸惑うアルス。

けれど人形師は姫君へ静かに告げる。


「私はあなたとアルスの恋を決して許さない」



駆けてゆく姫君。
行き着いた先で知る、アルスの真実。
覚えた違和感から辿りついたのは、史実を知る謡唄い。


謡唄いは歌う。
哀れな人形師の話を。
そこに隠されていたのは、この国の秘密。
誰が言い出したのかもわからない、この国が機械の国と呼ばれる謂れ。


謡唄いは問う。

「……君は哀れな人形師を責めるのかい?」


選択する二人。
そうして皆が、それぞれのオシマイへと向かう。



たとえ歯車が意図も想いもすべて巻き込んで、廻り続けたとしても。
手繰り寄せた糸の先がシアワセに繋がっていなかったとしても。

それでもオシマイだけは幸せな結末であると信じて。




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